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縦書きの名刺にこだわり、使い続けている。 30年ほど前に、横書きのものを使ったことがあるが、しばらくしてやめてしまった。 横書きでは、文字の配列に落ち着きがなく、気品さが失われるのだ。 日本の文章は本来が縦書きで、漢字もひらがなも縦書きすることを前提としている。 私たちは子供の時から、縦書きに馴染んできているのである。 それがビジネスの世界では、横書きの文章がスタンダードで、縦書きすることはまずない。 そんな中にあって名刺だけは、昔から縦書きだったのである。 ところが、今の時代では、縦書き名刺をもらうことはまずない。 名刺ホルダーを眺めてみると、縦書きのものもあるが、随分前にもらったものである。 ホルダーそのものも横書き仕様になってしまい、昔のような縦書き仕様のものは見かけなくなってしまった。 そんな名刺のことが、新聞に載った。 『現代ことば考−縦書き名刺が減った訳−』井上史雄「日本経済新聞」28.11.13 名刺は個人の顔、企業の顔である。 どんな名刺を使うかで、印象が変わる。 最近の名刺は横書きだ。 昔は縦書きだった。…… 郵便番号を手がかりに4期に分けてグラフにしたら、きれいな変化が見えた。…… 郵便番号3桁実施は1968年。 5桁は同年に普通集配局のない地域に適用し、90年ごろから大口事業所に割り振った。 7桁実施は98年である。…… 郵便番号なしの名刺は9割以上が縦書きだった。…… 数%現れた横書き名刺の番地と電話番号は、算用数字である。 郵便番号3桁の時期には、縦書き名刺は6割に減った。…… 増えた横書き名刺では、番号は全部算用数字になった。 郵便番号5桁の大企業のものでは、縦書き名刺は5割ちょっとに減った。 郵便番号7桁の時期には、縦書き名刺は2割に急減した。…… 90年代から電子メールが普及した。 アドレスを縦書き名刺で読もうとしたら、名刺を傾けることになる。 2000年の大企業社員の名刺の集計では、メール記載率7割。 縦書き名刺は5%にすぎない。 もう二、三〇年で縦書き名刺は古風な絶滅危惧種になるだろう。 2016.11.20 |