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田中優子(法政大学社会学部教授、現法政大学総長)が、白土三平の『カムイ伝』をテキストに、比較文化論の講義とゼミで論じたものを、小学館が『カムイ伝講義』(2008年)と題して出版している。 その中に、資格に関して論じている箇所があり、なかなか考えさせられるものがある。 その要点は、次のとおりである。 資格とは……一種の保証書である。…… しかし、現実の場で本当に求められるのは、……不確かな信頼よりも実力である。 資格は、……知識と経験を一定期間積んできたことを証明するものである。 しかしそのことと、その分野を極めることは、……次元の異なる問題だ。 つまり、こうしたお墨つきは、ときにその業界に生きる者の活動範囲を限定し、……心に怠惰心をも生みかねない。…… 人は何かに守られていると思うと、どうしても安心してしまう。 安心は緊張を緩め、場合によっては、それ以上腕を磨くことをしなくなる。…… さらに、資格を取得することが目的化し、その先が見えていない人も少なくない。 何がしたいのか、……どう社会に貢献したいのかなどを考えるのは、「とってからにしなさい」では、本当は危険なのである。 2016.11.26 |