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スクラップブックから−官に立ち向かう!−  2020.6.1


仕事柄、役所と接する機会が日常のこととなっている。
そんなとき役所の対応に、不満と腹立たしさを覚えることがある。
ここ20年ほど前より、随分改善されてきている印象ではあるが、それでもしばしばのことだ。
その根底には、「官尊民卑」の不遜さが根強くあるようだ。

「不遜」:相手に対して尊敬する気持ちも持たず、思い上がっていること。
高慢(いばって人をばかにするようす)。

おそらく、彼らは役所に就職した当初は、全体の奉仕者として仕事に誇りを抱き、澄んだ目で仕事に取り組んでいたのだろう。
ところが、1年もしないうちにそんな芽は簡単に踏みにじられ、当初の思いが夢(=マンガかドラマの世界)だったことを思い知り、やがて自分が自覚なしに不遜という風を吹かすことになろうとは、それこそ夢にも思わなかったことだろう。
人間は誰だって、他人の痛みなどより自身の安全を優先してしまう本能に支配されているのだ。

そんなことを改めて考えさせてくれる新聞の切抜きがある。
『福井新聞』2018.8.29付の1面コラム「越山若水」がそうだ。
官に立ち向かう英雄を書いている。
この記事を読んで、「官楽民厳(かんらくみんげん)」という言葉が浮かんできた。

「越山若水」2018.8.29付

 宅配便をこんなに身近にした功労者の一人は、ヤマト運輸のトップだった故小倉昌男氏だろう。
強大な権限を持つ霞ヶ関に立ち向かい、規制緩和を勝ち取ってきた。
▼氏が会社を退いた後も気骨は引き継がれた。
16年前の業界紙に、幹部が役所を痛烈に批判する記事があった。
「公僕という観念が全くない」と歯に衣(きぬ)着せない。
▼彼らは組織を守ることしか考えてない、「官尊民卑」の思想に貫かれている、とも。
びっくりするほどの激しさだが、いまとなってみれば率直な指摘にうなずく。
▼国の33の行政機関が雇用する障害者の水増しは3400人超に上っていた。
法定雇用率の半分ほどしか満たさず、各省の大臣らトップが軒並み謝罪する羽目になってしまった。
▼民間企業だと、法定雇用率に届かなければ懲罰的な「納付金」が課される。
一方の役所には間違いはないというわけか、そんな規定はない。
「官尊民卑」の不遜さが垣間見える。
▼もちろん、一番怒っていいのは障害のある人たちだ。
水増しは長年にわたっており就業機会を奪われた人が相当な数に上るはずだから。
霞ヶ関の罪はあまりにも大きい。
▼実は、冒頭の小倉氏は障害者の自立や社会参加にも熱心だった。
退社後には個人資産の大半を投じて福祉財団を設立している。
率先して障害者を雇用するどころか不正を続けてきた官側に、合わせる顔はあるか。

2020.6.1