■ 彼女に夢中2024.5.16


こんな気持ちになったのは30年振りです。
何だかドキドキするような毎日なのです。

長い間、仕事だ勉強だと走り続けてきましたが、どうした訳か道端の小さな花に目を奪われてしまったのです。
花屋の店先に咲き誇るバラやラベンダーには何の感動もないのに、道路脇の砂の吹き溜りにしがみつくように咲いている一輪のたんぽぽが、雲の切れ間から差す陽の光のように、私の心に突き刺さってきたのです。

こんな歳になって、純な心持ちが一気に私の全身を覆い尽くしてしまったのです。

 可愛いいなあと思う
 こっち向いて欲しいなあと思う
 いろいろ知りたいとなあと思う
 もっと一緒にいたいなあと思う
 何かしてあげたいなあと思う
 キスしたいなあと思う
 抱きしめたいなあと思う
 一生一緒にいたいなあと思う
 彼女の子供が欲しいなあと思う

寝ては夢起きては現つ幻の・・・
彼女のことが頭から離れなくなってしまった。

彼女を初めて見かけたのは二日前の朝、あの場所だった。
もう我慢が出来ない。
今日今すぐあの場所に行けば、彼女に遇えるかしら。
彼女はこの私のことをどう思うだろう。

妻や子供たちには何といえばいいのだろう。
こんな私を許してくれるだろうか。

でも今を逃すと、これから先あんなに素敵な彼女に出会えるチャンスはないかも知れない。
それよりも自分の残り少ない人生を考えれば、悠長なことはしていられない筈だ。
彼女と一緒になるためには、どんなに多くの障害を乗り越えないといけないだろう。
でも、そんなことはどうでもいいのだ。

自分の今の気持ちを大切にしよう。
自分に素直になろう。
覚悟を決めれば何とかなるさ。
「山よりでかい猪(しし)は出ない」というじゃないか。

私は彼女に新居を買い与え、新生活は始まった。
妻や子供たちは、あれだけ私を非難し責めたにも拘らず、今では彼女を見つけると「おはよう」とか「元気」などと声を掛けたりするようになったから、驚くよりもあ然としてしまう。

昨日は最高級のウェットタイプのドッグフードを与えていたし、今日はシャンプーをしてやり、「一緒に寝るんだ」と彼女の奪い合いをしている。

そうだ、そろそろ良い名前をつけてやらねば。

2005.5.28




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