仲間と外で食事したときのことである。 テーブルに備え付けの醤油注ぎのラベルに「かえし」とあった。 仲間が「「かえし」って?」と訊いてきたので、次のように返答した。 「かえし」は煮た醤油で、煮てないのが「生醤油」。 とっさに答えたものの、時間が経つにつれ、あれでよかったのかと不安になってきた。 そこで調べてみると、「かえし」とは、「醤油に本みりん・砂糖を入れて煮返(にかえし)して作ったもの」とあった。 「醤油を煮た」は正解だが、「みりんや砂糖を加えて」とは言わなかったので、説明不足だと分かった。 一方、「生醤油」とは、「火入れを行わない醤油」とあったので、間違いではなかった。
「生醤油」に似た表現に、「生蕎麦」というのがある。 生(なま)の蕎麦と書くので、「茹でる前の蕎麦」のように思えるが、そうではない。 「生蕎麦」は、「小麦粉などのつなぎを使わずに打った蕎麦」のことをいう。 いわゆる十割蕎麦である。 蕎麦屋さんの暖簾に、「生蕎麦」と染め抜いたものをよく見かけるが、本当に生蕎麦=十割蕎麦かと首を傾げてしまうことが、何度もあった。
さらに、「生」の付くものとして「生一本」が思い浮かぶ。 その意味は「純粋でまじりけがないこと」をいう。 特に日本酒の世界で言われることが多いようである。 良く知られているのが、「灘の生一本」であろう。 今どき、桶買いで成り立つ大手酒造の酒に、純粋でまじりけがないものなどあろう筈がないが、歴史的には文字通り生一本だったのだ。
2024.4.25
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