子どもの頃からマンガが好きで、読むばかりでなく、高校時代には石森章太郎(「仮面ライダー」等)の『マンガ家入門』に出会い、描くことにも夢中になった。 マンガ家になりたいと、さいとうたかを(「ゴルゴ13」等)のアシスタントに応募したこともある。 以来、今日までマンガを読み続け、蔵書約5千冊の内2千冊余りはマンガである。
しかしながら、小説を読むのは何ら抵抗がないのに比べ、マンガは何となく傍目を気にしてしまう。 中学生の頃、マンガ雑誌を手にした父親から、「何やこの本はマンガばっかりやな」と、非難する口調で言われたのがトラウマとなって、未だに好きなマンガを読んでいても、わだかまりが付き纏っている。
ところが今、矢口高雄『オーイ!!やまびこ』全5巻(講談社)を読み返しているが、その第4巻のあとがきに、著者はマンガの素晴らしさを端的に書いている。 これを読んで「我が意を得たり!」、マンガに対する心のつっかえが払拭出来たのである。 矢口高雄は、私の好きなマンガ家であるが、改めてその凄さ=聡明さを確信した次第です。 その要約は次の通りである。
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マンガには二つの概念がある。 一つは「マンガは子どもの読むもの」 二つは「マンガは低俗、俗悪・・・小説は高尚な芸術」 果たして・・・「マンガ」は「小説」より劣るものでしょうか。 ボクは断じてそうは思いません。 双方とも次元の違うものなのです。 「マンガ」と「小説」とするよりも、「絵」と「文章」の機能の相違で・・・対比してみれば一目瞭然です。
「絵」が最もその機能を発揮する場面は情景描写″です。 一枚の名画・・・その画面に描かれている情景″を余すことなく文章で表現・・・出来ますか……!? 何万語を費やしても・・・そのものズバリを文章で表現することは出来ません。 しかし、「絵」ならば瞬時にして誰にでもわかります。 一方「文章」は・・・特に優れているのは心理描写″です。 恋する心、悲しい気持ち、うれしい感じ等々……を相手に伝えようとする時「文章」の機能は大変なものです。
情景描写″に最適な「絵」と心理描写″に優れた「文章」とをドッキングさせたのが「マンガ」ではありませんか。 そんな「マンガ」のどこが低俗で、俗悪で、「小説」より劣るというのでしょう。 むしろ「小説」よりも優れた一面を有するジャンルだと、ボクは声を大にして言いたいのです。
2024.7.11
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